☆平成22年8月31日

時刻は11時前。
四苦八苦はしたものの、いざ蓋を開けてみれば思った以上にスムースに辿り着いた。

しかし、こう、何ていうか…想像していた以上に…


田舎やね、鎌倉。落ち着くわ。

駅より外へ出た俺は、喫煙スペースにて一服しながら取り敢えず次の一手をどうするか改めて考えてみる事にした。

二つ折りにしていたるるぶを広げる。二日間の突貫観光による汗水や、主にアルコールからなる違う汗水などが染み込んだ、そんな可哀想なるるぶをさらに乱暴に広げる。ちょっと破けた。…コレは、サドの愛情表現なのです。

順当に考えれば、次はやはり鶴岡八幡宮か。
何がある所かは知らないが、まぁ神社っつーぐらいだから鳥居はあるのだろう。←何故貴様は鎌倉に来たのだ!クラスの無関心っぷり、特とご覧じろ。

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俺にとっての観光というモノは、そのモノ自体が大事なのでは無く、そのモノを含めた"空気感"こそが大事なのだ。

新鮮なモノなら、"其処"がただ友人が住んでいるというだけの住宅街であっても、全国的に有名な観光地であっても、同じように楽しめる。別の角度から、同じようにね。

きっと、他人様とは見たい"モノ"が違うんだろう。
そもそも俺は『有名な所に行った』なんて既成事実から作るアクセサリは全く以て必要としていないんだから。

ま、何にせよ、"俺はこうだ"という、ただそれだけの話。言いたがりの与太話。

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鶴岡八幡宮へ行く、と決めたは良かったが、弱った事にアクセスルートが分からない。
取り敢えず、道でも聞くのに誰か居ねぇかな…と周りを見渡す。

駅員…いや、アレは敵だ。

警察官…いや、アレは犬だ。

バスの運転手…お、コレは良いかも。何だったら乗っちゃえ。

『ちょスンマセン、鶴岡八幡宮って此処から近いんですかね?』
『そこのホラ、小町通りってのを真っ直ぐ、歩いて10分くらいで着くよ。』
『おお!思ったより近いんすね。そんじゃ歩いてみますわ!おおきに!』

流石は世界的にも有名な観光地、バスの乗降口すらバリアフリーになっている事にちょっとした感動を覚えながらも、運転手さんに礼を言う。小町通りとやらの入り口は直ぐ其処に見えている。

そして、おお、これが栃木の姉さんのイチオシこと、鳩サブレー(タコハチロウ的なアクセントで)。

暫く店舗内を覗き込んだりしながら考えてみたが、やはり此処で購入してしまうと手荷物になるので、帰りにまた改めて寄ってみる事にした。
さぁ、まずは一路、鶴岡八幡宮へ!

鳥居を抜け、栄えているのか栄えていないのか…何とも言えない小町通りをゆっくりと歩く。多分、人が居ないのは今日が月曜日だと言う事と、まだ朝の11時前だと言う事に起因しているのだろう。

土産屋、ソフトクリーム屋、料理屋…流石に多種多様な店が軒を連ねている。
先にも述べた様に、時間的な事もあってか気持ち呼び込みにやる気が感じられない。前のカップルには左右から呼び込みが掛っているのに、どうも俺の通過時には呼び込みにやる気が…。

時間的な事は関係ないのか!!もしや今の俺、『一次審査でゴメンナサイ』状態!?
などと幾分敗北感に苛まされている所に元気に声を掛けてきたのがソーセージ屋さん。

てか、この左右にズラッと並んだ店の中で敢えてソーセージって!!そんなオチは要らねぇ!!!
コンニチワ、私が土産やソフトクリームは買いそうにないがソーセージは買いそうだと判断された男です。

ZAZEN BOYS/USODARAKE

今回のムジクは『ZAZEN BOYS』より『USODARAKE』。

この乾いた感覚、冷めて醒めた視線、引っ繰り返る白と黒そして白が黒で黒も白、めまぐるしく早回されるオセロの情景さながらに嘘だらけ嘘だらけ。

この『USODARAKE』は、歌詞も曲調も、その全てが凄く心地よい。それこそ数あるザゼン楽曲の中でも一、二を争う程に。
"コレ"だからこそ落ち着く、"コレ"だからこそ冷ませてくれる。
逆上せ上った所からゆっくりと地に足付ける、主観視点から客観視点へと切り替える。そんなスイッチの様な曲なのだ。

さて、バスの運転手さんの言っていた通り、大体10分程で小町通りを抜けると其処は剥き栗でした。剥き栗?

左手は山に沿うように立ち並んだ住宅と時々コインパーキング、前面にはズッと伸びている車道、右手にも車道、向こうの方にはちょっとした商店街の様なモノが見える。

そんなT字路で暫く立ち止まり、真っ直ぐ進むか右に折れるか考える。

…えーい!ザブングルは男の子!(?)

日本男児たるもの、やはり此処は真っ直ぐ行くべきであろう。結論さえ出れば後はまたひたすら歩くのみである。
山に沿って決して広いとは言えない歩道を歩く。直ぐ隣に走っている車道には間断なく走り去ってゆく車、車、車の流れ。

外人とすれ違い、カップルを追い抜き、とにかく真っ直ぐ進んで見たは良いが、どういう事なのか…鶴岡八幡宮が全く登場しない。そうして右手には何か美術館らしい物まで見えてきた。

…明らかに、そう明らかに、コレは判断を間違えている。

仕方が無いので立ち止まって地図を眺める俺。美術館が此処で、今居る俺の向きはこっちで…。

ず っ と 鶴 岡 八 幡 宮 の 敷 地 に 沿 っ て 歩 い て い ま し た

仕方が無いので鶴岡八幡宮の脇から攻める作戦を取る事に。
取り敢えず目の前の美術館…『神奈川県立近代美術館』に入ってみようと敷地内に入るも、何と言う事か入口が無い。
いや入口はあるのだが、その、明らかに開いていない。辺りを見渡すと、『休館日・月曜』の文字。

掃除のおばちゃんと目が合う。…はたた。

地図によると美術館から鶴岡八幡宮の境内へ入れそうな感じであったので、背後に掃除のおばちゃんの視線を感じつつ、敷地内を探索する。池と垣根を発見。

どうも美術館をぐるっと取り囲んでいる垣根の向こう側が境内みたいだ。
おばちゃんが向こうへ行った隙に、こう、垣根に手を入れて、左と右へと掻き分けて…。

鶴 岡 八 幡 宮 へ 無 理 矢 理 侵 入 。

俺に侵入できない場所は無い!!と、変な達成感に少し高揚しつつ隣を見ると、其処にはちゃんとした入口が…。
ん、結果オーライ。男は後ろを振り返らないモノだ。見なかった事にして先へと進む。


…変な所から入ったせいか、順路がイマイチ良く分からない。