☆平成22年8月31日

起きた。時間は…6時半。
体調は…と言えば、少し頭が痛いがその他はおおむね良好、少なくとも悪くは無い。


カーテンを開ける。うむ、良きかな良きかな、本日も快晴なり。絶好の観光日和である。絶好の、観光"敢行"日和である。

シャワーを浴び、歯を磨き、買っていた黒珈琲を一気に呷る。良いぞ、何か良い。今日は"イケる"気がする。
そんな勢いに任せ、当初の予定通り最終日は『鎌倉〜新横浜駅〜帰路』というルートを選択する事にした。

咥え煙草のまま、借りているノート型パソコンを開く。電源を入れ、グーグルマップにて鎌倉への行き方を検索。

順路としては、まず横浜駅、そこから湘南方面への列車にて鎌倉へと向かえば良いらしい。…ん、単純明快極まりない。
九時半頃にチェックアウトする事に決め、暫くゆっくりする。ゆっくりし過ぎて朝食を食べ損ね、少し凹む。
…結局、この二日間にホテルより渡された朝食券を使う事は無かった。

九時半。

二日間お世話になったホテルへ別れを告げ、改めて神奈川の街へ。
月曜日と言う事もあってか、周りは首輪よろしくネクタイを締めた企業の犬共が溢れ返っている。相変わらず日差しがキツイ。

みなとみらい線馬車道駅より横浜駅へ到着。そのまま構内案内板を頼りにJR乗り場へ。

…駅、広い。

陽の光の入ってこない四方をコンクリで囲まれた広い建物をただ歩くと言うのは、野生児の俺としては中々にこう…エキサイティングな感じである。エキサイティング?
程無くして、JR乗り場へと到着。…到着、したのだが…。

お と う さ ん お と う さ ん J R 乗 り 場 が た く さ ん 有 る よ

しまった。良く分からない。切符売り場にてそれぞれの行く先などを睨みつける事、十数分。
もう『これっぽい!』という自分の嗅覚だけを頼りに、ええいままよっ!と自動改札を通過する。

ここでまた六つもの選択肢が登場。もう泣きたい。コッチは何とか線…アッチは何とか線…何とか線!!何とか線!!!!そんな事を急に言われましても私、いや、その…もう結構です!!

ああそうだ名案を思い付いたぞ。いっそこのまま其処に在るドトール的なソレの中で時間を潰しつつ、まわりにはさも鎌倉に行った体で話を進めても良いんじゃないだろうか。それこそが皆が幸せになる近道では無いだろうかエヘヘ。

一寸、心がポッキリ折れてしまいそうになりつつも、神奈川くんだりまで来たのであるし、せめて鎌倉の地くらいは直接踏みしめ無ければ!と何とか克己に励む。頑張れ俺、負けるな俺。

…そうだ!負けてなるものか!JRめ!あの駅員だって敵なのだ!どうせ『かまくらいきはあてぃらでずよ〜アババ』とか抜かしながら平気で千葉行きの電車に俺を乗せようとするに決まっているのだ!!糞、糞、オラもう高知さ帰るだ!都会の駅には魔物が住んでおりますれば!!

克己作戦、大!失!敗!

どちらにしろ、こんな所で逡巡していてもただ時間が流れていくのみであるし、情けない事極まり無かったが妹に電話してみる事にした。…駅員に聞けば良いじゃないかって?いや、アレは駅員じゃない。敵だ。何か負けた気がするから嫌だ。

『…あい、もじもじ。』

『おう、鎌倉行きたいがやけんどよ、どの乗り場ぜ?』

『えー…知らんぜアタシ。ナビタイムで全部検索しゆうき、アンタもそれ見てみたらえいやん。』

…明らかに寝起きだった妹の口より放たれたまさかの返事に一瞬固まるも、そうか!その手があったか!妹に昨日教えて貰っていた総合ルート検索サイト『navitime』という手が!
一応調べてブックマークしておいたものの、すっかりその存在を忘れていた。

妹に礼を言い、電話を切ってすぐさまサイトへアクセス…、乗り換え案内にて出発駅と到着駅を打ち込み数秒…。

お、おお、おおお。コレは中々に凄いぞ。

何線何番乗り場の何時何分は元より到着予想時間、乗り換え駅および乗り換え回数、金額に至るまで必要な情報が全て瞬時に画面へと表示された。これなら俺でもイケるな。

…いや、でもこれ…出発まであと4分しか無いやん。

すぐ目の前にあったロッカーに荷物を放り込み、表示されていた乗り場へとダッシュする。階段なんて二段飛ばし。見よ!これぞ年寄りの冷や水!!年寄りって言うな!!!←知るかい

ピリリリリリ…という出発を意味する電子音がけたたましく鳴り響く中、目の前に停まっている電車に駆け込み乗車する俺。直後『駆け込み乗車は危険ですので〜』のアナウンス。

アハハハハ、今さら何と言おうが俺の勝ちだ!負け惜しみはみっともねぇぞ、JR!!←良い子の皆はマネしないでね
ヤーイヤーイ!お前の母ちゃん、三〜十〜路〜!!…て、お前の母ちゃん若いな。←何を言っているんだ

SPECIAL OTHERS/Laurentech

何だかんだとあったものの無事に魔の巣"横浜駅"を脱出できた俺は、電車の座席に深く腰を掛け、俺ポッドを装着した。
途端、イヤホンより体内に流れ込んできたのは『SPECIAL OTHERS』の奔流。『Laurentech』という奔流。

PV宜しく、ピースフルな今の俺の状況にはがっちり合致な一曲である。俺ポッド、相変わらず良い仕事をしよるわ。

そうして、ふと。携帯電話に目をやる。
厳密に言うと、携帯電話に表示されたままであった"現在の俺の為の"乗り換え表に記載されていた必要運賃の所に目をやる。

…。

しまった!俺の買った切符だと、鎌倉まで行けねぇ!!支払った銭が足りてねぇ!!
一瞬パニック状態に陥り緊急停止ボタンに手を伸ばし掛けたが、良く良く考えれば足りない分は後で払えば良いのだ。

寧ろこんな事で緊急停止ボタンでも押そうものなら、JR共に寄って集ってケツの毛まで引き毟られた挙句、ハチ公前へ全裸で繋がれて皆の晒し者にされてしまう所であった。そういう噂を耳にした事がある。←良い子の皆は嘘をついちゃダメだぞ

妹の住んでいるらしいエリアを颯爽と走り抜け、鎌倉駅が段々近づいてくる。平日の月曜日と言う事が功を奏してか、電車はかなり空いている。にも拘らず、わざわざ俺の隣にうら若き女性二人組が座った。

暇を持て余していた事も有り、脳内で少し勘違いしてみた。敢えて、そう敢えて勘違いしてみたのだ!!ワザと!!ワザとね!!!

※以下、妄想!!←良い子の皆はマネしな…そもそも此処を見てる時点で良い子ではないから別にどうでも良いや
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その仄かに赤く染まった頬を思い切り右手で叩(以降は危険ですので、音声のみお楽しみ下さい)

バチーンバチーン、ブルルルーン!

バチーンバチーン、ブルルルルーン!!

シコピュッピュッ

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気付けば鎌倉へ到着していた。