★放浪虫(2011・神奈川)・目次

※三日目その10

2011年、9月29日。

イイイイィィーッ!

何がイケナイのかオマエ!オマエは信用出来ないネ、だから、アタシ、これ持って上がる!
何がイケナイ!?イケナイ?だから何がイケナイ!アタシのだ!


イイイイィィーッ!

…などと、隣の受付窓口で尋常じゃない感じに叫び続けているのは見るからに気の違ってそうな婆。
黙っていれば日本人と見紛いそうなその面差しや風体と、そしていざ喋った時の独特のアクセント。
アレは多分、いやその傍若無人で常軌を逸した振る舞いからも、間違いなく中国人であろう。受付の姉さんも大変だなアリャ。

東京タワーの入り口にある受付で入場料を支払い、大展望台から更に上の特別展望台まで上れる入場チケットを購入しつつ、隣の受付を眺めながら何となくそんな事を思う俺。

時間を少し戻そうか。

増上寺を後にした俺は、東京プリンスホテルの敷地に沿うように東京タワーへと向かっていた。
グーグルのストリートビューで見ると、大体こんな感じ。

正しくこの道を、ただひたすらに大分大きくなってきた東京タワーへと向かっていたのだ。
もっとも、実際の時刻は既に3時過ぎ。この画像と較べて日差しは幾分か傾いてきていた。

此処まで来れば早い物で、それはもう一歩、一歩と歩を進めれば進めるほどにさらに大きくなっていく東京タワー。
それに連れて、この胸のワクワクドキドキ感もそれはもうどんどんと膨れ上がってゆく、加速度的にそれはもうどんどんと!(と、三十路を折り返し間際のオッサンが興奮しております、の図。※注1)

そして、そんな俺の気持ち以上にどんどんと、それはもうどんどんと背後から近付いて来るのが、アチラ。
物凄い形相でキャリーバッグを引き摺りながら迫り来る黒尽くめ婆。

キャスターが上手く転がってないのかバッグがガッチャンガッチャンとまるで鳴いているようだ。
気持ち歩く速度を緩めて、道を譲る俺。どうも背後をアレほど鬼気迫る形相で歩かれても落ち着かない。

婆『…チッ』

…挙句に舌打ちされる俺、もう逆に面白い唐突さ。何コレ笑

この時、時刻は大体3時半に少し足りないくらいだったか。
時間的な余裕もまだまだあったので、此処からそう遠くないと思われる東京タワーまでは婆の背中を眺めながらブラブラ歩いて行くことにした。

…背中を眺めながらブラブラ歩いて行くことにした、のに。それから数十秒後には婆に追い付いてしまった。
キャリーバッグがプリンスホテル駐車場前の信号の下の縁石というか段差?に引っ掛かってガッガッ『イーッ!』ガッガッ『イッー!』とラマーズ法みたいになっている婆に、いとも簡単に追い付いてしまったのである。

そうして、追い付いてしまったのならコレはもう仕方が無い。そんな婆を助ける訳でも無く、ただ尻目に追い抜いて先を急ぐ。
いや、まぁアレだ、助けが必要なほどにも見えなかったし、それにホラ、コレがもう直ぐ其処に見えちゃってんだもの。

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空気公団/たまに笑ってみたり(スタジオライブver)

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※注1…この時は折り返し間際だったです!今は、はい折り返しました笑