☆平成22年8月30日

赤レンガ倉庫の喫煙所。
俺と同じく開店待ちと見られるカップル共の、それぞれ野郎だけが煙草を吸っているこの状況…傍から見るとちょっと笑える。

俺?俺は妹と来ている訳で、あんなカップラー共とは一線を画しているのだよ。一緒にされては困るのだよ。

ニコチン補給も済み、妹と階段みたいな所に腰を掛けて海を見ながら『海やな。』『海やねぇ。』という物凄い薄い会話をしていると、程無くして赤レンガ倉庫の入口の鍵が開いた。

なだれ込む俺達。ああ、良い。この空調の効き具合、コレだ、コレが良いんじゃないか!この状況が!コーイチ君!(第五部風)

一気に緩む俺達。昼飯を食う店を品定めしつつ、暫くウロウロしてみる。
この赤レンガ倉庫、小洒落た建物の中に雑貨屋がゴタッと入った極小規模のショッピングモール、と言った感じである。

ぶっちゃけ、服飾系なんかの買い物をするなら、みなとみらい方面のデパートに行くべきかな…そんな事を思いながらダラダラと歩き、最終的に辿り着いたのが三階のレストラン。店名は忘れた。

入った感じ、割とお洒落だ。
妹がフロア中央に在る何か変な『雪山を模したと思われるプラスティックで出来た造形物』を指差し、『あれ、絶対に夜に光るがで。夜に光るって!』と小声で呟く。

開店直後と言う事も有ってか、店には俺たち以外は誰も居ない。
貸切である。

取り敢えず、俺は胃袋の調子がいまいち優れなかったという事も有り、ドリンクにトロピカルビネガー、昼飯としてザワークラフトとジャーマンソーセージを頼んだ。
妹はレディースランチみたいなモノだったと思う。

そうして、店の中央に在る『雪山を模したと思われるプラスティックで出来た造形物』を指差し『おい、アレ何やと思う?』と妹に問うた所、『だからさっき言うたやん!光るがって!お兄も返事しよったやん!』としこたま怒られる。空返事は俺の特技だ。


そうして料理が運ばれてきた…のだが。

『ちょ!!笑 アンタ、それ、どんだけキャベツが好きながで!!』

俺の前には、ザワークラフトと、ジャーマンソーセージと、そしてジャーマンソーセージの付け合わせとしてこんもり盛られたザワークラフトが並んだ。

俺、どんだけキャベツが好きなんだろう…と、確かに俺もそう思った。

そうしてお互い飯を食いながら『ああだこうだ』と積もる話をしていた所で、ちょうど両隣りにカップルらしき組み合わせと、おばんと娘らしき組み合わせが座った。

…これだけ席が開いているのに、何故に俺らの隣に座るか。

しかも、何と言う事だろうか。
その両隣に座った奴らが、両方とも物凄い肉々しいオーダーを通したらしく、動物の屍肉の塊的なモノが彼奴等それぞれの席の前で轟々とフランベされ始めたのだ。

…バカかと!この暑いのにバカかと!しかも昼からフランベってどんだけ油ギッシュやと!!
非常に居た堪れなくなってきたので、店を出る事にした。

『帽子屋』とかいう店で妹がシルクハット的な麦わら帽子を買うのに付き合った後、二階のテラスにて何か変な鐘を発見。年寄り夫婦と娘と、そしてその子供と思われる一行がその前で長々と記念撮影を行っていた。

被写体である"おじい以外の連中"は立ち位置的に待っている此方が見えていると言う事も有り、随分と此方を気にしてはくれていたみたいだが、どうにもおじいは自分の撮った写真に納得がいかないらしい。

その手に光るは一眼レフ…ああ、コレはアレだ。如何にも面倒くさそうなタイプのおじいだ。

こういった写真も後々は大事な思い出になるのだろうからと、さらに待ってあげる事…数分。
おじいもようやく納得がいったらしく、コチラに軽く会釈しながら去って行った。

『おい、さっきの訛り、宮崎やないかや?』『いや、語尾に"たい"ってついちょったき熊本とかやないかえ?』と話しながら鐘に近づく土佐弁訛り丸出しの二人。土佐弁訛り丸出しの二人は高知と宮崎のハーフなので九州県人には他県人よりちょっとだけ優しい。

『おい、これ二人で鳴らしたら幸せになれる系のアレやないかや!』と思い込みだけで鳴らす気満々の兄に対し、『てか幸せになれるって言うてもコレ、恋愛成就とかそっち系やんか!』とちゃんと注意書きを読んでいる妹。

しまった、コレは罠か!!

…まぁ折角なので一人一人別々に鳴らしておいた。家族愛、家族愛。


妹と鐘(無許可)

そうして一通り回ってはみたものの、有るのは雑貨屋ばかり。いい加減する事も無くなったので赤レンガ倉庫を後にする。

途端に俺達を強襲する横浜の強い日差し…堪らずに赤レンガ倉庫2号館へと避難する俺達。横浜の太陽に負けた。
しかしながら2号館には大して興味を引く様なモノも無く、いよいよ観念して山下公園まで歩く決意を固めた。

HALFBY/Catch Up The Housemartins

そんな訳で、本日分のムジクはDJ『高橋 孝博』のソロプロジェクト『HALFBY』より、『Catch Up The Housemartins』である。
底抜けに明るくハッピーなこのモータウンビート、まさしく暑い横浜の街を練り歩く俺達に相応しい。

ヨコハマ・サーフ・ムジーク。

潮の香りと照り付ける陽の光、燃えるは生命、今と言う刹那の輝き。確かに刻んだ、この瞬間。
二度と訪れないからこそ良いんだ。"生きている"、その感じが良いんだ。



像の鼻公園だか何だかを通り抜け、山下公園を抜ける。芝生に設置されたスプリンクラーから飛沫く水の粒子が心地良い。
歩く事、十数分…見えてきた見えてきた。アレがマリンタワーだ。

妹に『アレに昇る!』と宣言し、さらに歩く。気付けば、その真下まで来ていた。
下から見上げるマリンタワー。意外とデカイ。

そして近づく、刈り取りの秋。それは収穫の秋。腸の蠕動運動。

つまり、UN-KO!!

…妹を待たせ、収穫作業の為に俺は一人、マリンタワー内の便所に向かった。