☆平成22年8月30日

朝、けたたましく響くメールの着信音で目を覚ます。
携帯電話を開き、メールを確認すると、其処には…。


『おい。昨日の晩、確認のメール無かったがやけど、ほんまに中華街行くがでね?』

妹からのメールにより『あ、そういや夜にもっぺん確認のメール入れるとか確かに言うた気がするわ…』と思い出す。
時刻を確認すると…9時過ぎ。約束していた時間は10時30分頃。

しまった、割とタイトだ。

しかも朝飯は8時までらしく、現時点で明らかに食いそびれてる。しかしながら食いそびれた事自体はそれほど気にならなかった。
…何と言うか、こう、朝飯を食う気が起きないくらい胃もたれが酷い。参った。

妹とメールをやり取りし、取り敢えず地下鉄の馬車道駅で10時30分に落ち合う事になり、ゆっくりと一服した後、準備に取り掛かった。

今回は、まず赤レンガ倉庫でブラブラした後、適当な時間で少し早い昼飯。
そして散歩がてら山下公園マリンタワー、海の見える公園から外人墓地を抜け元町中華街、といったコースだ。
因みに、最終日にハンさんにこの事をメールしたら『無謀だよね。その行動力を見習いたいよ。』と言われた地獄のコースである。

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…え?

普通に30日の話を書いているが肝心のカリフォルニアキャットファイトの話はどうなったのかって?

そんな面白い事も無かったので省略したのでは有るが、上記の様に気にしている人もひょっとしたら、そう極稀に、超レアな感じに、草葉の陰にでも存在しているかも知れないので…あー、まぁ一応は書いておく事にしようか。

海軍カレーに舌鼓を打った後、改めて『なか卯オチョボグチノミックジャガーミタイナカオダチダネ店』に戻った俺達を待っていたのは、相も変わらず忙しさからコメツキバッタみたいな動きを繰り返しているコメツキバッタの姿であった。

これはもう今日は暇になる事は無いな、と感じた隊長さんと俺は取り敢えず入店し手を振ってみたのだが、そんな俺達に対して『ああ…うん。』とそっけないなんてモノじゃない対応をするコンゴトモヨロシク。そして要領の悪そうなバイト君。

仕方が無いので奥の席に座り、普通にプリンを頼む俺。
同じくウドンを頼んだ隊長さん(流石は四次元胃袋を持つ男)と、茶を呑みながら暫くなか卯について話をする。

(というかプリンも隊長さんに奢って貰ったのであり、もう何か本当にごっつぁんでした!笑)

その間にも、客はどんどん入って来ている。マニ笑を更新出来ないのもこりゃあ無理無いな、と一寸思った。
そして、オーダーを要領の悪そうなバイト君に通してから実に5分も経たない内にお盆にプリンとウドンを乗せて軽快に運んで来る店長。中々に無駄の無い動きだ。

『ホラ(と、隊長さん宅にサッカリンが忘れていった手荷物を見せる隊長さん)』
『オウ(と、軽く頷き厨房に戻るニッカボッカ)』

…何だこの『俺 is Air』な感じ!!

と。

また直ぐにコチラに走り寄ってくるヴァニラアイス。
なんだなんだ、と思ってる俺に『何か胡散臭い文化人みたいになったね。』と言い放ち、隊長さんが届けた荷物を手にまた厨房へと戻っていくゴリライモ。

…や、やくみつるの事かぁぁぁぁぁ!!てか、ほっとけ!!

度重なるこの扱いに流石に少し寂しくなり、その寂しさをごまかす為にプリンをかっ込む。美味い。

しかし、伊達や酔興で無く本当に忙しそうであったので、此処はもう邪魔をしない為にも大人しく帰る事にした。
そうして麺ツの助手席で足元のシートを直している時、ふと後ろに気配が…。

何と、わざわざ別れを言いにあの忙しい店内からサンニヤカーが走り寄って来ていたのだ!
そして『忙しくて相手出来なくてごめんね。』『いやいや、まぁ仕方が無いですよ。』的なやり取りを終え、本当にお別れの時間に。



隊長さんの食べたはいからうどん…260円


銀座ロック(惜しい!)と過ごした時間…累計2分


俺の食ったプリン…プライスレス(奢りだからね)

…特に思う所も無し。これからも末永く、お元気で。

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さて、場面は戻ってホテルのカウンター。
カードキーを預ける序に、カウンターのお姉ちゃんに『馬車道駅ってこっからどう行ったらえいがですろうか?』と尋ねてみた所、明らかに言語体系が違う様な感じだ。そう、つまり通じていない。ニュアンスで汲み取れ!プロだろうが!と思うも、話が進みそうにないので屈辱ながら向こうの言葉にて話してみる。

『ああ、それでしたらこのホテルを出て右に一分程進むと見えて参ります。』

…おお、通じた!自分、語学力もまだまだ捨てたもんじゃないな、と一人悦に入りながら『おおきに!』と気分良く外に出る俺。

良い、天気だ。ぶっちゃけ暑い。コレは暑い。即Uターンして部屋で酒を呑みながら一日を過ごしたい気分で胸が張り裂けそうになるが、そんな事をしたら妹に鉄の爪で物理的に胸を裂かれるので、其処はもうグッと堪えて、フロントのお姉ちゃんの言うとおりに右に進んでみた。

…駅なんて何処にも無い。

横浜ランドマークタワーを眺めながら、何と出発して数十秒の内に途方に暮れる事になってしまった俺。我ながら先が思いやられる。

どうしようもなく暫くキョロキョロしていると、『馬車道駅』と書かれた標識が目に止まった。その隣には地下へと続く階段。

そうか、地下にあるのか…どうりで駅の建物とか見えない訳だ…。何かドッと疲れたが、取り敢えず降りてみる事にした。

想像と違って、中は随分と殺風景である。

馬とか馬車とか転がる枯れ草とか、そう言うのが全く無い。馬車道駅の癖に。
この様子だと、もしやレールを走っているのも馬車では無いのか!!(と書きつつ、レールの上を馬車に走ってこられても逆に困る訳では有るが)

代わりに目に映ったのは煉瓦調の壁と床、そして中央にはエスカレーターが二基。
壁にポスターを貼る事が禁止されているらしく、俺の感じる殺風景さは其処から来ているのだろう。

携帯を取り出して時刻を確認すると、丁度待ち合わせていた10時30分を少し回った所であった。早速、妹の携帯にコールしてみる。…今、丁度着いた所らしい。

程無くして合流。
これまで20数年間なんだかんだと一緒に過ごしてきたという事も有り、2年ぶりながらも、挨拶は『おう久し振り。元気やったか。』『おうよ。』的な軽いやり取りを交わすに留まる。ねちこいのはお互いに嫌いなのだ。

Squarepusher/A Journey To Reedham (7.am Mix)

今回のBGMは、遠い昔にこの妹に貸して貰った『Squarepusher』の『Big Loada』というアルバム盤より、『A Journey To Reedham (7.am Mix)』という曲である。

イギリスのアーティスト『Thomas Jenkinson』のソロプロジェクトである『Squarepusher』は、俺が説明するまでも無く、その圧倒的な存在感でもって昨今のミュージックシーンに大きな影響を与えていると言っても過言では無い。

奔流し炸裂するビートの波にメロディアスなリズムが絡まり合って生み出される、閉じられた電子空間の中で無限に広がり続ける一種の波紋。数字と記号という波が記してゆく軌跡。

俺は丁度この『Big Loada』や、一つ前のアルバム盤『Hard Normal Daddy』辺りの楽曲しか知らないのだが、wikiによるとその後には一時的に打ち込みの作曲を止めフリー・ジャズ方面へのアプローチを強めたりもしていたらしい。
それはそれで、とても気になる所である。

さて、そんな『Squarepusher』の中でも間違い無く俺の一番好きな曲である『A Journey To Reedham』に乗せて今回の記事をお送りする訳であるが、さしずめコチラは『A Journey To YOKOHAMA』と言ったところか。

話を戻す。

『超腹減ったで!』という妹の案に従う形で、取り敢えず立ち話も何やし赤レンガ倉庫で適当に何か食いながら一服しようぜや、と歩き始めること数分。
デカい、それはもうデカい観覧車が目の前に現れた。よこはまコスモワールド、という名前らしい。

横浜でコスモて!!こりゃまた随分デカく出たなオイ!!コレはアレか、四国ニュージランド村みたいなもんか!!と何となくツッコミながらも、取り敢えず写真には収めておいた。

そうして、また五分ほど歩いた所で…おお、アレが、アレこそ赤レンガ倉庫!!…に間違いなさそうな建物が前方に見えてきた。

『おい、アレが赤レンガ倉庫やないかや?』と言う俺の問いに対して『んー、それっぽいねぇ。知らんけど。つーか暑い。日傘欲しい。』などと、実は神奈川県じゃ無くて金沢県(そんな県は無い)にでも住んでるんじゃねぇかと…だから神奈川県の事なんて殆ど知らねぇんじゃねぇかと!…そんな風にしか思えない答えを返す妹。

流石はこの『いい加減に手足が生えた』俺の妹である。相変わらずのその調子に、何かホッとした。

そうして、とうとう赤レンガ倉庫の前へと到着した二人。
取り敢えず入口を探して建物に歩み寄ってみた…までは良かったのだが。

等間隔で並ぶ、そのどの入り口にも掛けられているモノが、そう、そうそうアレだアレ、業界用語でいう所の…鍵。鍵だ。鍵が掛かっているのだ。

つまり中に入れない。

隣で『これよ、もしかして開いて無いがやない?』という妹、ナイスな着眼点である。俺も今、丁度そんな風に思っていた所だ。
携帯にて時刻を確認すると11時に十分前ほど、入口近くの喫煙所にはそこそこの人だかり…この状況から推測するに、多分11時開店と見た!!


因みに、画像に映っている扉は入り口では無い。
(ではなぜ撮った、という問いに関しましては、いや何となく、としかお答えが出来ません)

仕方が無いので、此処で一服しておく事にする俺。妹は数年前に煙草をやめたので、一人寂しく喫煙スペースへ。

深呼吸するように煙を肺に入れ、そうして青く晴れ渡った空へと向けてゆっくりと燻らす。優しく頬を撫でる海からの風が髪の毛を揺らし、何とも言えず気持ち…気持ち…、

気持ち悪い。コレはもう、ただの熱風だ。熱波だ。蛭に塩、俺に熱波。

溶ける溶ける溶ける。

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