☆平成22年8月29日

横浜駅へと降り立った俺を出迎える一つの影。
恰幅の良い風体に、人好きのする笑顔…そう。


この界隈きってのジェントル麺こと、はたまた麺ツのオーナーこと、その名も隊長さんの登場である。

今回の神奈川行、なんと初日は隊長さんが一緒に回ってくれる事になっていたのだ。

今年になってもう三度目という事もあり、また隊長さん自身の人柄と言う事もあって、久しぶりの再会にも拘らずまるで古くからの親友に再開したような気持ちで握手を交わす俺。

我ながら馴れ馴れしいにも程が有ると思います!

早速、ニュー隊長号こと麺ツを駐車している場所へ向かう二人。
それはそうと、今思えば車で新横浜駅まで来て居たにも拘らず駅のホームで待っていてくれたと言う事は…わざわざ入場券まで買って出迎えてくれたと言う事なのか!

ふなっぷ!(今さらですが、本当に有難う御座いました。)

そうして新横浜駅構外へ一度出て、裏へ回る俺たち。
と、おお!アレは、アレこそまさしく麺会所にてアップされていた…麺ツ!

眩しい!その銀メタリックなオーラが眩しい!コレはアレだ、新車だ、新車に違いない!
早速、右側の座席に乗り込む俺。内装も流石は新車、あの独特な『新車臭』が堪らない。座り心地も抜群である。

隊長さん『新車?いやいや、コレ、中古車ですよ笑』

…ぱ、ぱなっぷ!(無敵アイス。俺は林檎が好き。)

新車に見紛う程のオーラを持った麺ツにて行き先を話し合った結果、取り敢えず昼飯を食べに行く事になった。

中華街に。

明日、妹と中華街に行く俺にとっては、そう…予行演習である。これはいい、今日の事を内緒にして兄貴風を存分に吹かす事が出来る。

…結果的に、楽しみ余って『今から一先ず先に中華街楽しみまーす!』的な頭の悪いメールを妹に送り付け、全ては台無しとなったのではあるが。俺たち兄妹にとっては、こういう低脳さ加減も一種の兄貴風なので、まぁ良し。


そうして出発する前に隊長さんに自分で買って来たお土産を渡し、丁度良い…と言えば隊長さんに失礼では有るが、ウチの考え無しの婆が『妹へ』と買って来た糞重たいゼリーの詰め合わせ的なモノも貰って頂いた。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

…いや、これはもうウチの婆の悪い癖と言うか、そもそもこのお土産を妹に渡すと言う事は、即ち一日中、妹が帰るまで俺はこのお土産を持ってみなとみらい〜中華街を歩かなければいけないという事なのだが、言わばそういった『他人の迷惑』よりも、『何かを持たせないと体面にかかわる』と言う事の方が彼女にとっては重要なのだ。

確かにロッカーという手段も有るには有るが、そうなると使える駅が限定されてしまう訳で、とにかく何をするにも邪魔にしかならない。
こうなる事を予測できたからこそ、神奈川行前日の晩までその事実は伏せておいたのに、あろう事か直後に無断で買って来たのである。予想の斜め45度上を行く展開。

何がムカつくかと言えば、俺に無断で買って来た事自体よりも、買って来た上での計算尽くで『いや、亮輔、どうしよう!荷物になるのに買うてきてしもうた、どうしよう!これ、どうしようか、もう荷物になるき亮輔食べや。』という体だ。自分の事(体面の事)しか考えていない癖に、そうやって見え見えに気遣うふりをする。
これは俺に相談したら断る事が分かっている上での行動なのだ。いよいよもって腹が立つ。

…しかしながら、それを隊長さんへ『さも隊長さんへのお土産として買って来たフリをして』手渡すと、それこそ俺も同じ穴のムジナになり下がってしまうので、隊長さんにも予め伝えたし、此処でも書いておく事にした。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、話が脇道に逸れてしまったが、これより舞台は中華街へと移る。

車窓を流れる隅から隅まで目新しい景色を横目で眺めながら乗り心地のすこぶる良い麺ツに揺られ、気分も上々。
隊長さんと色々話をしている内に、程無く麺ツは中華街へと入った。

適当なパーキングに駐車し、目ざとく灰皿を見つけた俺は其処でニコチン補給。
都会は灰皿を見つけるのにも一苦労である。

中華街と言う日本に在りながら一種独特な世界を持つ町並みを堪能しつつ、昼飯を食べる店を探す俺達チャイニー隊。略して、隊。

『クリアルヨ、ウマイヨ、タベテミテヨ』と四方より寄ってくる天津甘栗の押し付け試食(女性)を『えいき、おまんの股間の栗食わせぇや!甘皮剥かせぇや!』と心で吼えつつも、颯爽と右手を上げて『いや結構!』と断る俺は野獣で紳士。噛み砕いて言うとむっつりスケベ。…て、やかましゃあ!

その道中、電話が掛ってきた隊長さんを尻目に『マ(女辺に馬)祖様』を祀っている霊廟にてチャイニー風参拝を初体験したりしつつ、最終的には時間無制限オーダー制食べ放題の店へと腰を落ち着けた。
そこでエビマヨやチンジャオロースー、アヒルの皮や腐った卵などを隊長さんと共に貪り食い、運転する必要が全く無いのを良い事に昼下がりから思う様に紹興酒や焼酎で喉を潤す俺。

ああ、最高!太陽が出てる内に呑むアルコール最高!

そうしてアルコールの力によって尚一層に饒舌となった俺をチラチラ見てはニヤニヤしている隣の女子高生と思しき女子の一団。

『おいおいおい、俺に惚れると火傷するぜぇ?熱くて死ぬぜぇ?…寧ろ!逆に!俺が!!』などと興奮しつつ会計を済ませ、そうして隊長さんに何気なく『さっき、隣に座ってた一団ってコッチ見ながら笑ってましたよね?』と尋ねるも、返ってきた答えは『亮さんの土佐弁が珍しかったんでしょうね。』と甚だ妥当。うん妥当。さらば一夏の恋。

適当に中華街をぶらつきつつ、大周りで麺ツへと戻る。

そう、腹ごしらえも済ませた所で、とうとう本日の目的でもある横須賀へ向かうのだ。

CRAZY KEN BAND/GT

頭の中で流れるのは勿論この曲、俺の中でのハマといえばクレイジーケンバンド

俺の中での横須賀といえばGT!GT!GT!

もう麺ツもGTに見えてきた。というか、そもそもGTとは何だ。車種では無いよな?
何か分からないのに『麺ツがGTに見えてきた』とは何事だ俺。俺はそんないい加減な男だったのか。俺はそんないい加減な男だったのか!う、うぁぁぁぁぁ…(燃えよペンの雰囲気でお読みください)

まぁ、何はともあれGT!GT!GT!

最高に気持ち良い軽快なブラスとパーカッションの響き、クレイジーケンこと横山剣のファンキーなボーカル。これぞ、これぞ横須賀!寧ろ三笠、戦艦三笠GT!GT!GT!(?)

そんな脳内BGMとともに、隊長さんの麺ツにて取り敢えず横須賀駅を目指す俺達ヨコスカにわか愚連隊。略して、隊。
程無く横須賀駅を通過、件の新年横須賀オフ会にて使った魚民を尻目に、猫間さんがかつて生活していたであろう街をひた走る。
抜ける様に青い空と煌めく海が、とても気持ち良い。やはり俺は海が好きなのだ。でも山も好きだ。

し か し 盆 地 は 嫌 い だ !!

イマイチ盆地は経験した事が無いのだが、何か暑そうなイメージが有る。でも多分、実際に盆地に行けば好きになる様な気がする。俺はそういう類の生き物なのだ。

さて、そうこうしている内に警備ハンパ無い海軍基地入り口ゲート前なども通過し、NEW隊長号はいよいよ海岸線に差し掛かる。
幸運な事に天気にも恵まれ、これはもう何処かで東京湾を激写しなければ!という使命感にも似た想いに駆られた俺は、隊長さんにその旨を伝え、取り敢えず『つり公園』なるモノの近くの道に路駐して貰った。


おお、アレは東京かな〜千葉かな〜ウヘヘ。と、関東マニアとしてはもう涎が止まらない状況に表情をだらしなく弛緩させながらシャッターを切り続ける俺。そんな俺を怪訝そうに見詰める横須賀の釣り人。沖を走るタンカーの早さに感心している隊長さん。

それぞれの思惑を胸に海を見つめ続ける者たちを、次の瞬間には、


割 と 大 き め の 津 波 が 全 て 呑 み こ ん だ 。


おしまい。