☆平成22年8月29日

朝5時過ぎ、ふと目が醒める。目覚ましのセットは5時40分。
まだ鳴らない目覚まし時計のタイマーを静かに切り、あくび一回、伸びをする。


既に赤らむ空、今日も天気は良さそうだ。取り敢えず電車通りを眺めながら一服。

神奈川へ向かう為の準備は昨日済ませている。
パンツもしっかり洗っている。

しっかり洗っているし、四枚。

二泊三日なのに四枚、二泊三日なのに四枚、今穿いている一枚合わせて何と五枚!!(振り向き様にカメラ目線で目をカッ…と、見開く)

勿論、既にしっかりとカバンに詰めている。
例え血尿が出ても二回までなら何とかなるぞ。うむ、今回も全くもって死角無し。

歯を磨き、髭を剃り、ザッと髪の毛を撫で付け、カウボーイハット調の麦わら帽子をギュッと被る。
…やはり、少しサイズが小さい様に思う。俺の頭がデカイのであって、決して彼(帽子)が悪い訳では無い。
どうか皆、彼(帽子)を責めないでやってほしい。

そして、俺の頭がデカイと言ったヤツ(俺)、おまえは其処で腕立て百回。ハイッ!

…こんな事を書いているから、物語が前に進まないのだ。そう、それは分かっている。
取り敢えず、車に荷物を放り込み、一路、駅へと向かった。

ものの5分で駅へ到着。相変わらず地味な駅だ。
『車DEトレイン』という一昔…いや二昔ほど前のセンス薫るネーミングのサービスにより、今回は高知駅に車を停めて旅に出る事になっているので、少々不安ながらも車を指定された場所へ駐車。荷物を抱えて駅構内へ。

サンクスでおむすびと黒珈琲を購入し、自動ながら二台しか無い改札を抜け、南風へ乗り込む。

−さぁ、これより暫くは岡山へと向かうだけだ。
出発予定時刻は7時。到着予定時刻は10時過ぎ。そこで新幹線のぞみへと乗り換える運びである。

旅行用俺Podを装着し、黒珈琲を一口飲んだ後、シートへ深々と身を預ける。
目線は流れる景色、想いはもう既に遥か神奈川へと飛んでいた。

車掌さんが件の戦場カメラマン系E声。

そうして8時過ぎ、瀬戸大橋を通過。此処まで来てようやく多少揺れがマシになる南風。


このまま、この辺で観光するのも悪くないな…と一寸、思った。
雄大なる瀬戸内海、海に浮かぶ島々。眼下に浮かぶ島々。あの島々には、此処から見るにつけ小さな島々でしかないが、それぞれに人々が生活をし、それぞれの世界を生きているのである。

ただあくせくと、ただ代わり映えの無い日々をあくせくと…

ふ は は ! 見 ろ ! 人 が ゴ ミ の 様 だ !!

(スミマセンでした)

それは兎も角、さっきから空調が優し過ぎて何か気持ち悪い。
ぬるい、ぬるいぞ南風…ハッ!だから南風!!?

そんな訳もあるまいし、どちらにしろ下らない事を考えていても疲れるだけなので、取り敢えず寝る事にする。
そうして、それより程無く岡山駅へ到着した。

岡山駅で南風より新幹線へ乗り換える、実はこの間のタイムリミットが丁度10分なのだ。
しかし、此処まで実に何度も回数をこなした『岡山乗り換え玄人』である俺ともなると、そこはもう慣れたものである。

ゆっくりと歩いて新幹線乗り場に向かっても、充分に間に合うのだ。

…気付けば博多方面の新幹線乗り場に居る俺。そう、コレはアレだ。確か、あー…そう、古代の偉い人が確かこう言っていた。

油 断 大 敵

必死の形相で反対側の乗り場へ走る。ちょっと神様、お笑いの神様。

誠 に 申 し 訳 な い が 、 こ う い う の は 要 ら な い !!

それはもう、なりふり構わずにただ走り、そうして本来乗らなければならないのぞみへと飛び乗った。
その瞬間に『プルルルル…』と鳴り響く、発車を知らせるサイレン。

そう、俺は『岡山乗り換え玄人』。この程度のハプニングもやっとこホイホイである。※注1

※注1…お茶の子さいさいの一生懸命形。それはもう既にお茶の子さいさいと言う状況では、無い。

取り敢えず新幹線内の自販機にて黒珈琲(この日、実に4本目)を購入し、指定席へと向かう。
うん、やはり南風に比べると抜群の乗り心地だ。シート間も広い。

さぁ、ゆったり、いや寧ろぐったり、新横浜駅へ向けて出発だ。

…新幹線!新幹線!早いぞ早いぞ新幹線!

窓を流れる景色に、一気にテンションを持っていかれる俺。そう、本物の紳士は常に子供の心を忘れないモノである。
新神戸駅付近では明石海峡大橋が見え、さらに上がるテンション。

お!アッチが淡路?おお!!!こっちは明石!?


(海峡大橋が全く映っていないこの画像より、その時の俺の残念さ具合をご存分にお楽しみ下さい。)

…もう傍から見るとただの可哀想な人となり下がる、本物の紳士。それは悲しい物語。
前に座っていた小さな男の子に怪訝そうに見詰められ、少し萎む。

暫くして、車内に響き渡る『次は新大阪、新大阪』というアナウンス。

その頃にはすっかり新幹線の旅に飽き、欠伸をしながら携帯を弄り続ける子供の心を全く忘れた偽物の紳士。
そう、大人になると言う事は、何かを失うと言う事でもある。そんな側面も確かにある。

よくよく考えると大阪と神戸は観光をした事が無いのだが、中部や関東に比べ来ようと思えば簡単に来れるが故、どうしても後回しになってしまうのだ。
出張中、少ない自由時間に一人梅田の地下街で酒を呑み、ホテルに帰ろうと思ったら何時の間にか外はダダ振り。
外へ出る階段が滝の様になっていて、俺は鮭か!遡上する鮭か!…とか、ぶっちゃけそんな思い出しか無い。

…と言うか飽きた。早く新横浜へ着けバカ。(※)

すっかり荒む。荒み序でに喫煙室へ煙草を吸いに行く。
先に煙草を吸っていた荒んだ風貌のオッサンとチラチラ見つめ合いながら変な空気で煙草を吸う事になり、より一層荒む。荒む荒むで日が暮れ…暮れて堪るか!

…と言うか飽きた。早く新横浜へ着けバ(※くりかえし)

(※)を三回ほど繰り返した所で、愛知駅へ到着。ここで前後の席のメンバーが随分と入れ替わる。
『もう、愛知旅行でも良いか。』と半ば真剣に考えるも、此処はグッと堪えた。見よ、この強靭な意志力。この歳になり、少しは行き当たりばったり気な生き方にも少々変化が出てきたのだ。

俺の心の中のベロ『早く真っ当な人間になりたーい!』
…それはまだ、随分先のお話。

そうして、愛知駅を出発する新幹線。カズや笑う本部長といった親友を思いながら、窓を流れる景色をただ見詰めている時に俺Podより流れるは、『ハンバートハンバート』より『アメリカの恋人』。

ハンバートハンバート/アメリカの恋人

旅はまだまだ始まったばかりなのに、優しいアコースティックギターの旋律と絡み合う様に、踊る様に、ただ紡がれてゆく佐藤夫妻の声が、不覚にも染みた。
…恋人、というタイトルの曲が染みたからと言って、俺がゲイだからとかそんな訳では決してない。

交尾大好き!亮で御座いますれば、亮で御座いますれば!!

暫くして、窓の向こうに大きな海の様なモノが一面に広がる。摩周湖である。

…嘘である。浜名湖である。
嗚呼、止めて下さい、止めて下さい、顔はぶたないで下さい出来心ですスミマセンでした。

宇宙犬さーん(T_T)/~

そうして茶畑に次ぐ茶畑と言った一面茶畑の静岡県を抜け…静岡県を抜け…遥々、来たぜハ〜コダ嗚呼、止めて下さい、止めて下さい、顔はぶたないで下さい出来心ですスミマセンでした。

そう、実に六時間にも及ぶ長かった車上の旅も終りを迎え、とうとう新横浜に到着である。


…相変わらず、都会の駅はデカい。